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「―――朝が、来てない???」 「……うん。お父さんもお母さんも寝ちゃったままなの。起こしても起きなかった。マシュマロも寝てた。やっぱ起きなかった」 「マシュマロって何だ」 「うちの猫だよ」 へえ。今時の子どもは猫にしゃれた名前を付けんだなぁ。 いや問題はそこじゃない。 俺は家の近くの公園で、声をかけてきた少女とベンチに座っている。 子どもの戯言に付き合ってる暇はないはずなんだが、何となくこの子の言うことを聞いてやらなきゃいけない気がした。 別に根拠はねえ。 「朝が来てねえって……どういうこった」 「あのね。わたし、学校に行きたくなかったの。イヤだなっていつも思ってて。それでね、きのうの夜、お星さまにお願いしたの。もう朝が来ませんようにって」 「ああ……そういえば昨日の夜あったな。何とか流星群」 寝る前にスマホを見ていて、確かそんなニュースをちらっと見た気がする。 俺は天体イベントなんて興味ねえし、そのまんま寝たけど。 「そのお星さまに願ったのか? 朝が来ねえようにって」 「……うん……。あのね、わたしね……学校で、あんまり好きじゃない子たちがいて」 「仲が悪いのか?」 「よくわからないけど、わるぐちを言われるの。あと、わたしのノートにらくがきされた」 「なんでそんなことするんだ。そいつらは?」 「わかんない。でも、女の子なのに青いランドセルは変だとか、そういうのは言われた」 「どうでもいいじゃねえか。赤だって青だって」 「わたしは青が好きなんだけど、女の子は大体ピンクとか赤だから変なんだって」 まぁ要するに、いじめか。 いつの時代にも、どこの場所にもあるもんだ。 ろくでもねえなあ。 くだらねえ。
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