23人が本棚に入れています
本棚に追加
<2>
「―――朝が、来てない???」
「……うん。お父さんもお母さんも寝ちゃったままなの。起こしても起きなかった。マシュマロも寝てた。やっぱ起きなかった」
「マシュマロって何だ」
「うちの猫だよ」
へえ。今時の子どもは猫にしゃれた名前を付けんだなぁ。
いや問題はそこじゃない。
俺は家の近くの公園で、声をかけてきた少女とベンチに座っている。
子どもの戯言に付き合ってる暇はないはずなんだが、何となくこの子の言うことを聞いてやらなきゃいけない気がした。
別に根拠はねえ。
「朝が来てねえって……どういうこった」
「あのね。わたし、学校に行きたくなかったの。イヤだなっていつも思ってて。それでね、きのうの夜、お星さまにお願いしたの。もう朝が来ませんようにって」
「ああ……そういえば昨日の夜あったな。何とか流星群」
寝る前にスマホを見ていて、確かそんなニュースをちらっと見た気がする。
俺は天体イベントなんて興味ねえし、そのまんま寝たけど。
「そのお星さまに願ったのか? 朝が来ねえようにって」
「……うん……。あのね、わたしね……学校で、あんまり好きじゃない子たちがいて」
「仲が悪いのか?」
「よくわからないけど、わるぐちを言われるの。あと、わたしのノートにらくがきされた」
「なんでそんなことするんだ。そいつらは?」
「わかんない。でも、女の子なのに青いランドセルは変だとか、そういうのは言われた」
「どうでもいいじゃねえか。赤だって青だって」
「わたしは青が好きなんだけど、女の子は大体ピンクとか赤だから変なんだって」
まぁ要するに、いじめか。
いつの時代にも、どこの場所にもあるもんだ。
ろくでもねえなあ。
くだらねえ。
最初のコメントを投稿しよう!