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首筋を真っ赤に染めた少女は、泣きながら男に懇願する。さあ、捕食された後の獲物はどうなる運命であるのか。
男はゆっくりと少女の首に両手をかける。まあそうだろう。生きて逃がしてしまったら、次の狩りもしにくくなるし、何より悪い噂が立ってしまう。
かわいそうな少女の最期を、物陰から息を潜めて眺めていた。助ける気はない。今更出て行ったとして、出来ることは特にない。やめろと言ってやめるなら、そもそもこんなことをしでかしたりはしない。
こんな無防備な状態で狩りをしているのを考えると、それでも問題がないように事前に仕込んでいるに違いない。下手に手出しをすれば、次に食われるのは自分だ。こんな所で、こんな理由で人生を終わらせたくはない。
ということで、哀れな小動物がその命の灯火を消しかけているのを見ていた訳だ。
「ねえ、僕がこのままこの子を殺したら、紫野川ちゃんはどうする?」
真っ赤な瞳の獣は、こちらを睨めつけながら尋ねてきた。その瞳に私の姿は映っていないはずだが、そこにいることを確信しているかのように、視線は一箇所に集中していた。
何事もなくやり過ごすことは叶わず、仕方なく物陰から身体を乗り出した。
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