magnet

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嫌な予感しかしない。 プライベートな電話番号なんてそう簡単には他人に教えたりしないもの。 それをこっそり手渡したのだ。 勘違いされたに違いない。 どう考えても加賀美に自分の性癖が勘づかれたのではないか─としか思えなかった。 もし…。 もし自分が逆にその名刺を受け取った立場だったとしたら。 間違いなく自分に気があるのかと思うだろう。 それに顔色一つ変えることなく、あの涼しげなポーカーフェイスで斗真の名刺をポケットにしまい込む加賀美の仕草は、手慣れているように見えた。 あれだけの美形だ。 連絡先をこっそり渡されることは日常茶飯事で、もしかしたら、性別など関係なく言い寄られることだってよくあることなのかもしれない。 男女共に恋愛対象であった整形後の斗真は、女性にばかりもてるようになったが、加賀美の大人の色気には男も女もきっと惹き付けられる。 ─俺の好みじゃないけどさ……。 懐かしの鈴木も加賀美に惹かれていたりするのだろうか。 斗真は悶々とあれこれ考えを巡らせながらデスクに戻った。 ─加賀美さんがモテるとか、そんなことはどうでもいいんだ。それよりも。 今、一番肝心なこと。 どうやってあの名刺について釈明するか。 それにどうやって社長であるあの人とコンタクトを取ればいいのか。 取り敢えず、先刻の面接は採用だと伝えなければならないのだから、マンパワーネットワーク本社に電話を入れなくてはならない。 本社だから社長の加賀美もいる筈だ。 だけどどうやって電話を繋いでもらう? 斗真は半日近く悩み、考え、そのことだけに時間を費やし、これまで経験したことがない程、仕事手付かずの状態だった。 しかし全ては杞憂に終わった。 事はあっさりと解決したのだ。 定時を過ぎて同僚達が退社していく中、斗真はまだ仕事が終わらない風を装いデスクにかじりついていた。 未だ加賀美には連絡ができないこの状況。 実は鈴木にもまだ面接採用の連絡すらしていない。 この鈴木への電話一本で、加賀美に繋がるか否かが決まる。 鈴木だっていつまで社に残っているかはわからないし、一刻も早く連絡しなければならないとわかっている。 ─あぁもう、なるようになれ! 半ばやけくそになりながら電話の受話器を持ち上げた。
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