恋愛成就は新しいうちに

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「私ね。新しいものが好きなの! 新しいって、それだけですごくわくわくする」  おれの隣の家に住むお姉さんはいつか、とても楽しそうにそう言った。近所の駄菓子屋に売られていた、新商品を眺めながらの発言だったと思う。  隣の家のお姉さんは、おれより六つ年上だ。三姉妹の末っ子でもある。小さいときからお姉さんは、お姉さんの姉からのお下がりばかり使わされていたらしい。 「お古ばっかりもらってたから、新しいものに目がなくなっちゃったんだ」  お姉さんはそう言って苦笑いした。そのときは「そうなんだ」とだけ思ったが、今のおれは「それだけじゃないよね」と思っている。  お姉さんは、確かに新しいものが好きだ。それは事実だ。目新しい雑貨に出会ってしまうと、どうしても欲しくなって買ってしまう。駅前のカフェで新作のスイーツが出れば、初日に食べに行く。近所の服屋で新しいものが出たら、すぐ見に行く。  旅行にもしょっちゅう出かけている。新しい経験がしたいからだと思う。  そんな調子でお金を使うから、すぐに金欠になる。だからアルバイトをしているけれど、長く続かない。他のアルバイトが気になって、すぐに辞めてしまう。  ……学校に通い続けられているのが奇跡じゃないか、なんて失礼なことを思ってみる。  万事について、新しいものが好き。それに加えて、好奇心が強くて飽きっぽい。お姉さんは、そういう人なんだと思う。
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