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そういうわけで、交際してきた人も数えきれないほどだ。お姉さんの好みを知るためにお姉さんと付き合っている男の顔をチェックしていたことがあるけど、全員、見事に違うタイプの男だった。男だけじゃない。たまたま街角で見かけたお姉さんが、セーラー服を着た女の子とキスしているのを見たときひっくり返りそうになった。おれの同級生がお姉さんと付き合ってるって聞いても、腹は立っても驚けないかもしれない。
ぼくは、お姉さんのことが好きだ。どこが、と聞かれても困ってしまう。いつから、であれば、小学一年生のときからだ。当時、登校班の班長をしていた六年生のお姉さんは、とても大きくてかっこよく見えた。年少者から年長者へのあこがれが、お姉さんをそう見せたのかもしれない。けれど、そのあこがれを差し引いても、お姉さんはとっても可愛い女の子だった。手足が細くて長くて、目がくりくりしていた。茶がかったまあるい瞳を細められたら、それだけで心臓が鳴り止まないくらいきれいな女の子だった。
可愛くて、かっこいい、憧れのお姉さん。
しかもそのお姉さんは、おれが一年生で小さかったからか、よくおれの世話を焼いてくれた。転んだときに絆創膏を貼ってくれたり、校内で迷子になったとき助けてくれたり。そんな日々を一年繰り返しているうち、おれはお姉さんに骨抜きにされていた。
お姉さんが中学に上がってからは、あまりお姉さんと遊べなくなってしまった。道で行き合ったときにお辞儀はするし、おつかいを任されてお互いの家を訪問もする。その中で他愛ない雑談もするから、お互いの近況を話しもした。でも、一年生のときのようにはかまってもらえない。避けられているわけじゃないけど、どことなくよそよそしさを感じた。
勉強とか部活とかが、大変だったんだろうと思っていた。おれは中学受験をしたから、四年生のころからたくさん勉強した。小学生でこんなに大変なんだから、中学生や高校生はもっと大変なんだろう。そうでなくてもお姉さんは好奇心が強い。勉強や部活に加えて、やりたいことをたくさんやっていたら、おれと遊んでる時間なんかないんだろうな。そう思っていた。
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