恋愛成就は新しいうちに

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「そっかあ、新入生かあ!」  その一言に、お姉さんの興味関心のすべてが集約されている気がした。顔をキラキラと輝かせて、まくしたてるように、お姉さんはおれに質問を重ねる。 「どこの中学? このへんの中学校じゃないよね。M中は学ランだもんね……。……T市の学校の制服じゃない?」 「……S中です」 「名門じゃない!」  すごーい! お姉さんは、拍手するように回覧板を叩く。 「中学受験するって言ってたけど、そこだったんだね! 私もU大受かったから、駅とかで会うかも」  U大はS中のすぐ近所にある大学だ。駅どころじゃない、登下校路がS中と途中まで同じ学校である。 「新学期、楽しみでしょう」 「もちろん、楽しみですよ。不安もあるけど」 「だよね! 私は、不安はないけどね。先週くらいから学校が始まったんだけどね、すっごく楽しいの! 学校自体も楽しいけど、新しいってだけで私、わくわくしちゃうから!」  いつか話したのと似た言葉をお姉さんが口にする。そりゃ、そうだろうな。新しい学校で、新しい人に囲まれて、新学期が始まるんだもんな。中学や高校に入学したときも、こんなテンションだったのかもしれない。だけどおれは、お姉さんがこんなにはしゃぐなんて知らなかった。  それは、お姉さんが新入生のときのおれが、新入生じゃなかったからだろうか。 「お姉さん、本当に新しいものが好きなんですね」 「まあね! あー、でも、新しいって楽しいけど、慣れるまでは大変ってこともあるよね」  それまではしゃいでいたお姉さんが、はたと少しだけ冷静になる。
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