恋愛成就は新しいうちに

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 お姉さんのあの笑顔を見て、改めて思った。おれは、お姉さんのことが好きだ。お姉さんの、あの輝かんばかりの笑顔が好きだ。ずっと、あの顔をおれに向けていてほしい。そのためにできることを考える。  お姉さんがおれと距離を置いたのは、忙しかったからでも小学生と遊びたくなかったからでもなく、おれが新入生ではなくなったからだろう。だとしたら、この一年が終わったら、お姉さんはきっとおれに興味をなくしてしまう。もともと顔なじみのおれは、そもそもお姉さんから新しいものとして見なされにくい気がする。となれば、一番興味を持ってもらえている今、行動しないといけない。  だけど、安易に告白して、万が一、成功してしまってもいけない。おれの知る限り、お姉さんはおれと同年代のやつとは付き合ったことがないから、チャンスはあると思う。だけど、お姉さんは同じ男と一ヶ月と続かないんだ。そうして、同じタイプの男とも付き合わない。飽きてしまうからだ。「過去の男」になったら、きっと、もう二度とお姉さんのあの笑顔は向けてもらえない。  一年のあいだに、どうやってアプローチをかけたらいいか。悶々と考えていると、一階の母さんに「早く降りてきなさい!」と怒鳴られた。夕飯のことがすっかり頭から抜けてしまった。具体的なことはひとまず、お腹を膨らませてからまた考えよう。  明日は入学式で、新学期だ。お姉さんみたいに「わくわくする」って言いきることはできないけど、明日から少しずつ、おれにできることを始めていこう。そんな決意を固めた。
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