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何だかんだ言っても、どんなに似ていなくとも、自分の半身だ。
自分にとって、なくてはならない存在だ
遠く離れていても、いつだって意識のどこかで繋がる感覚があった。
呼び掛ければ、微かな反応をいつも感じられた。
けれど今は。
滉はくわえたタバコの先からゆらゆらと立ち上る煙を見つめ、今朝の楊の言葉を思い起こした。
『僕自身の事を清算する』
清算、というのは付き合っていた女に会う、という事だったのか?
自分の中にフッと浮かんだ最悪の考えに滉はゾッと身体を慄わせた。
次のインターで降りて、引き返して楊を探すか。
一瞬、当初の目的から外れる選択肢が脳内に現れたが、滉は直ぐに打ち消した。
タバコの煙を身体の芯まで取り込むように吸い込んだ滉の脳裏に兄の言葉が蘇る。
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