282人が本棚に入れています
本棚に追加
『滉、五年前の夏祭りの時に美夕を連れ去ったのは従兄の夏樹だ。アイツは、中学生だった美夕にもアクションを起こしている。幸いどちらも未遂だったが、アイツの二回の行動が何を意味するか、分かるな?』
兄は、美夕の為に封印した悍ましい過去を明かした。
滉は息を呑んだ。
悪い噂しか聞かない従兄の夏樹。
代議士である親の力で全てが揉み消されている。
その男が、ずっと美夕を狙っていた。
しかも、もう何年も前から。
兄貴は全て知っていた。
滉は、くわえていたタバコをグッと噛み締めた。
『出張は取り止めだ。俺はこれから引き返す。お前はまず美夕がいるはずのマンションに行け。そこにいなければーー』
言葉はそこで一旦切れた。
兄のあんな悲痛な声を聞くのは初めてだった。
最初のコメントを投稿しよう!