醜悪の棲家

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『滉、五年前の夏祭りの時に美夕を連れ去ったのは従兄の夏樹だ。アイツは、中学生だった美夕にもアクションを起こしている。幸いどちらも未遂だったが、アイツの二回の行動が何を意味するか、分かるな?』  兄は、美夕の為に封印した悍ましい過去を明かした。 滉は息を呑んだ。  悪い噂しか聞かない従兄の夏樹。 代議士である親の力で全てが揉み消されている。  その男が、ずっと美夕を狙っていた。 しかも、もう何年も前から。  兄貴は全て知っていた。 滉は、くわえていたタバコをグッと噛み締めた。 『出張は取り止めだ。俺はこれから引き返す。お前はまず美夕がいるはずのマンションに行け。そこにいなければーー』  言葉はそこで一旦切れた。 兄のあんな悲痛な声を聞くのは初めてだった。
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