Case3 会社の上司と不倫をしている27歳

33/33
248人が本棚に入れています
本棚に追加
/194ページ
「違うの」 じっと彼は続きを促すように私を見ている。 「もうそろそろあなたから巣立つ時期なのだろうと思って」 「好きな人が出来たのではなく?」 「出来ればあなた以上に好きになる人に、これから出会いたいと思います」 私がそう言って笑うと、彼は大きく息を吐いた。 「そうか。 例の怪しげな彼の入れ知恵か?」 「まぁそうです」 「彼は俺がどうするって言った?」 「まさにさっきのような発言で。 彼なら巣立ったとしても仕事には影響させないだろうとも」 その言葉に彼は笑った。 「きっと彼に会えば同族嫌悪で喧嘩してしまいそうだ」 「本当に似てると思うよ?」 「俺もそう思う」 「あの」 「ん?」 「前の会社でも不倫していたの?」 彼はにやりと笑った。 「残念。それは彼の期待を裏切るようだが、君が初めてだよ。 そして、もうこんな事はしないと思う」 「本当に?」 「そうそう危険を冒してまでモノにしたい女性になんて出逢えないよ。 それに・・・・・・こうやって別れを言われるのは、身勝手だけど辛いとわかったしね」 そう言って彼は私を抱きしめた。 「巣立っても、何かあれば相談に乗るよ、一人の上司としてね」 「うん・・・・・・。 凹んだ時は美味しい物でも食べに連れてってね」 「あぁ、わかった」 辛い。 気を抜けば泣き崩れてしまいそうだ。 初めて本気で好きになってそして愛してくれた人は、既に他の女性のものだった。 苦しいけど、私は頑張って笑顔を浮かべた。 「私に幸せをくれてありがとう」 「こちらこそ」 私達は笑って手を繋いだ。 あと少しだけ最後のデートを楽しむために。 END
/194ページ

最初のコメントを投稿しよう!