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「ねぇ、なんで今度は落ち込んでるの」
また娘に指摘された。
私がわかりやすいのか、娘が鋭いのかわからないのだけど。
「ちょっとね・・・・・・」
ため息混じりに返事をして、娘にも聞いてみようと思った。
「ねぇ、この後震災に巻き込まれて、あなた以外みんな死んでしまったらどうする?」
娘は一瞬ぽかんとしたが、
「私も死ぬ」
それだけ言って部屋に戻っていった。
刺激が強かっただろうか。
でも彼がその立場になったのは娘と同じ年齢。
年齢なんて実際は関係ないのに。
やはり子供と向き合うのは難しい。
「つくづく、イチロウ君とうちの子達を会わせて説教して欲しいわよ」
震災のことについて子供達に質問したらこんな返答が返ってきたと伝えたら、あはは、と笑い声が返ってきた。
『それが普通じゃないですか?』
「もう少し想像力ってのは無いのかしら」
『無理ですよ、考えたくないですから』
「考えたくない?」
『そんなわざわざ苦労するようなこと、考えたくないってことです。
既に十分大変な世界にいると思っていますから』
「そうね、だからゲームとかに逃避するのかしら」
『わかりやすく結果が出ますからね』
「どういうこと?」
『現実では必至に勉強しても仕事しても、必ずしも結果が良いとは限らないじゃないですか。
でもゲームはそれだけ時間を費やしたり、課金すればそれに比例して強くなる。
わかりやすく努力の対価を認識できるんです。
遙かに頑張ろうと思えるじゃないですか』
「なるほど・・・・・・。
でもそれってなんか情けないわね」
『そうですねぇ、でも僕もやってますがやっぱり楽しいですから。
あまり取り上げるというのはやめておいた方が良いと思います』
「それはニュースの特集で見て、取り上げることは止めてるんだけど、病的にのめり込むんじゃないかと心配にはなるわ」
『まだ外に出てるから大丈夫ですよ』
「そうかしら・・・・・・」
この子は震災という事があったからこそ、今の彼になっている。
でも、多くの子達はそうじゃない。
私にはどうしたらいいのか答えが出なかった。
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