Case4 思春期の子供達に悩む主婦43歳

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「こんな事聞いて申し訳無いんだけど、被災した時のお友達はどうなったの?」 『あぁ、そうですね、自宅に戻ったメンバーの一部は死にました。 残ったメンバーは今はバラバラですが、これがびっくりするほどまともな職業に就いたメンバーが多くて』 「そうなの」 死にました、と友人にはさらっと使うのに、家族には亡くなったという言葉を使う彼に、本当に家族の存在が大きいことを実感する。 『被災した時、自衛隊や消防団の人や、多くのボランティアに救われました。 短絡的かも知れないですけど、特に自衛隊の人達を見て、純粋に僕たちにはヒーローに見えたんですよ。 あんな状況でしたし』 「ニュースでも、被災した経験からそういう道を選んだ人が結構居るなんて見たわ」 『そうですね、実際そういう方向に進んだメンバーもかなり居ます。 想像以上にハードで、一時は辞めたい逃げたいって始終言ってましたし、結局辞めたヤツだっています』 「でしょうね」 『でもそんな話しは美談になりやすいから取り上げられるのであって、実際多くの人達は普通ですよ。 それに被災してる時の事を美談でその後出ていたりしますけど、実際は酷かったところもありましたし、綺麗な話しばかりじゃないんですけどね』 「そうね、私達は本当に一部しか知らないのでしょうね・・・・・・。 イチロウ君が医者を目指したのもやはり震災のせい?」 『直接の理由では無いと思うのですが、僕は家族を失って、田舎の祖父母に引き取られたんです』 「あぁ、そうだったのね」 ずっと一人じゃなかった事に私は心から安堵した。 もちろんそれでも辛くて苦しいことには違いないのだろうけど。
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