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『看護師には復帰しないんですか?』
「それは・・・・・・無理よ」
『なぜ?』
「子供が居るし、なんせ現場から離れすぎたもの。
元々も経験も少なかったから、ほとんど何も知らない素人とかわりないわ」
『なんだかやらない理由を探して言ってるみたいですね』
「えっ?」
急に呆れたような声にびっくりした。
『あっ、すみません、偉そうに。
純粋に勿体ないと思って』
「いやいや、いいのよ」
『色々未だに気にされてますよね、そういう業種のこと』
「そうね、何だかんだいって必死に勉強して取った資格だし」
『なら、看護師が不足してるのはご存じですよね?
特に高齢化で訪問介護の要請は増え、本当に看護師は不足しています』
「そうね」
『なら復帰されては?』
私は黙ってしまった。
復帰したい、というだけで出来る訳じゃ無いこともわかっているからだ。
『そもそもこの宿り木カフェに登録した理由は何でしたか?』
急にそう問われ、そう言えば、と思ってしまった。
家族のことに疲れ、自分は一体何なのか、専業主婦を持つ子供にとってどうおもうのか、とかそういう事だったのに、彼と話していて、全然違うことを色々考えてしまっていた。
『私の存在意義に疑問、と書かれていたようですが』
「あはは、そんな事書いていたのね。
そこで見られるの?」
『はい、お客様の目的をいつも確認するように言われていたのですが、話すのに慣れてしまうと、なんだかその時その時の話題で進んでしまうのだと経験しています』
「そっか、私が初めての客なんだっけ」
『そうです。
いや、本当にスタッフって難しいですね、ってこんなことお客様に言う事じゃありませんでした』
「そう?別に私は気にしないわ。
それに私なんて最初書いたそれを、忘れかけてたわ。
イチロウくんと話すのはとても勉強になるし」
『だとしたら、これはこれで良いのかな』
うーんと悩んだような声が聞こえる。
そんな彼に私はくすりと笑ってしまった。
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