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今度はネットを開いて、求人情報を見てみることにした。
すると思ったよりも出てくる求人数に驚いた。
しかし求人内容が介護職が多い事、時間や曜日の縛りが多いところも多かった。
「そりゃそうよね、働いて欲しいんだもの。
長い時間、長い期間がいいわよねぇ」
でも個人病院もかなり求人が出ていて、そういう場所を見ると、短い時間でもとか、ブランクがあってもという事が書いてある。
復帰なんて考えたことが無くて、さすがに求人情報なんてまともに見たことが無くて、時代が変わったせいかこんなにも内容が変わっていることに驚いた。
そして、短い時間なら、ブランクあってもいいのなら、なんて思ってしまう自分が居る。
その為にはやはり勉強が必要だというのに。
「子供達には勉強しろっていうのに、自分は面倒だなんて。
でもねぇ」
私は再度ため息をついた。
「聞きたかったのだけど」
次の予約はあまり日を開けず入れておいた。
忘れないうちに、私は先に切り出した。
『はい』
「専業主婦だったお母様のこと、今はどう思ってるの?」
すぐに言葉が返ってこなかった。
私は静かに待つ。
『母は未だに見つかってないって話しはしましたよね?』
「えぇ」
『色々手続きが必要で、大人の人達がまぁ勝手にと言うか、必要にかられてだとは思いますが、母の死亡届を既に出しています。
でも遺体を見たわけでも、葬式をした訳でもないのでどうも実感が無いんです。
だから』
言葉が途切れた。
少し、息を吐く声が届く。
心を必至に落ち着かせているのかも知れない。
『だから、こんなどうしようも無い子供が嫌になって失踪して、どっかで幸せに過ごしていたらいいな、なんて思います』
ぐっ、と胸が締め付けられた。
その声は、本音であるようで本音では無いという事を私に伝えた。
ずっとこの子は自分のせいだと思って責めてきたのだろう。
会いたいはずなのに、そんな風に言うこの子が溜まらなく痛々しい。
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