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『さすがですね。
そうです、母の影響はあります。
被災した時思ったんですよ、沢山の看護師が避難所を回っていて、ただぼんやりと端っこで座っている自分より、母が看護師をしていたのなら、きっと多くの人の役に立って、必要とされたのだろうなと。
自分の母親なんてやってるより、その方が良かったのではと』
「それは自分が産まれてこなかった方が良かったということ?」
『そう、ですね・・・・・・』
「そんな事を言われると母親としては悲しすぎるわ」
『なんか母から、貴方たちのために必至に頑張っているのに!というのがひしひしと押しつけられるのが嫌だったんですよ。
そんなに思うなら産まなきゃ良かっただろ!と何度思った事か』
思わず私が息を呑んだ。
そうだ、それは私もおそらくやっている事だ。
こんなにも人生を犠牲にして尽くしているのにと。
「その言葉には耳が痛いわ。
それ、私もやってると思う。というかしてるわね」
苦笑いを浮かべる。
でもどうしてもそういう気持ちになる。
必至に尽くしている事に、酷い態度で返されれば悲しくもなる。
『だから、何か始めてみませんか?』
「看護師に復帰しろって話し?
実はあの後参考書一冊だけ買ってきたんだけど、見事なくらい覚えていないのよ。
この歳から覚え直して、仕事なんて出来るのかって思うのよね」
『お子さんの手が離れだして、看護学校に入られる方も多いようですよ?』
「そうねぇ、それは本当に凄い事だと思うわ」
『僕は、母親に、あなたのために必至に尽くしてるとされるよりは、放置気味でいいので、好きな事をして欲しかったです』
「ようは恩着せがましいのが嫌なのね」
『まぁ、そうですけど』
思わず二人で笑う。
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