Case4 思春期の子供達に悩む主婦43歳

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『さすがですね。 そうです、母の影響はあります。 被災した時思ったんですよ、沢山の看護師が避難所を回っていて、ただぼんやりと端っこで座っている自分より、母が看護師をしていたのなら、きっと多くの人の役に立って、必要とされたのだろうなと。 自分の母親なんてやってるより、その方が良かったのではと』 「それは自分が産まれてこなかった方が良かったということ?」 『そう、ですね・・・・・・』 「そんな事を言われると母親としては悲しすぎるわ」 『なんか母から、貴方たちのために必至に頑張っているのに!というのがひしひしと押しつけられるのが嫌だったんですよ。 そんなに思うなら産まなきゃ良かっただろ!と何度思った事か』 思わず私が息を呑んだ。 そうだ、それは私もおそらくやっている事だ。 こんなにも人生を犠牲にして尽くしているのにと。 「その言葉には耳が痛いわ。 それ、私もやってると思う。というかしてるわね」 苦笑いを浮かべる。 でもどうしてもそういう気持ちになる。 必至に尽くしている事に、酷い態度で返されれば悲しくもなる。 『だから、何か始めてみませんか?』 「看護師に復帰しろって話し? 実はあの後参考書一冊だけ買ってきたんだけど、見事なくらい覚えていないのよ。 この歳から覚え直して、仕事なんて出来るのかって思うのよね」 『お子さんの手が離れだして、看護学校に入られる方も多いようですよ?』 「そうねぇ、それは本当に凄い事だと思うわ」 『僕は、母親に、あなたのために必至に尽くしてるとされるよりは、放置気味でいいので、好きな事をして欲しかったです』 「ようは恩着せがましいのが嫌なのね」 『まぁ、そうですけど』 思わず二人で笑う。
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