Case4 思春期の子供達に悩む主婦43歳

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「『宿り木カフェ』、実は怪しいと思いつつ始めたけど、やって良かったわ。 やっぱり何か動いてみないとわからないものね」 それは本当に思えた。 ネットで男性と話す、それだけ聞けば怪しさしかない。  いい歳してなんてことを始めたと思ったけど、あの頃は本当に何でも良いからすがりたかったのだ。 よく考えれば、たまたま悪いものに引っかからなかっただけかもしれないけれど。 『そうですね、僕もこれを始める時は、ずっと怒られ続けるとかならどうしようかと思ってました』 パソコン画面に残り時間がわずかだと静かに注意表示が出ている。 「ありがとう。 せっかくだから少しだけ前向きに看護師の勉強始めて見るわ。 イチロウ君も頑張って」 『少しだけって言うのずるいですよ。 はい、頑張ります。 もし医者と看護師としてお会いすることがあれば、よろしくお願いします』 そんなこと、あり得ないのはお互いわかっているけれど、彼なりのエールだとわかった。 「えぇ、元気でね」 『はい、失礼します』 少しだけ時間を残し、通話は終了した。 ヘッドフォンを置き、画面には『ご利用ありがとうございました。よろしければアンケートにご協力下さい』との表示。 私は笑ってアンケートのページに行くボタンをクリックした。 彼も今は希望に満ちていても、現実の凄まじさに心折れる日がくるかもしれない。 いや、彼は幼い頃に味わった大きな壁を今も必至に登っている。 きっと簡単に折れるなんて事は無いのだろう。 素晴らしい医師になって欲しいと、私はアンケートに書き込んだ。
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