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「渡辺さんって、いつも平和そうよねー」
『まただ・・・・・・』
昼休み、私は女性陣と静かに休憩室でお弁当を食べていたら、いわゆるお局様からいつものお言葉が始まった。
「あまり苦労してないっていうのが表情とかに表れるのかな、羨ましい」
「そんな・・・・・・」
私、渡辺由香は少しだけ困った笑顔を浮かべて小さく答える。
そんな私を見て、彼女は何故か満足げだ。
「私なんてやっと結婚の決まった彼と結婚式の打ち合わせをしたいのに、仕事が忙しくて私がほとんどやってるの。
こっちだって仕事が忙しいのにさ。
あげく向こうの両親がいちいち連絡してきて、面倒ったらありゃしない」
『単にのろけたいだけじゃない』
周囲もいつもの事だとうんざりしているのだが、彼女の機嫌を損ねれば仕事を多く割り振られたり、上司にあること無いことを言ったりするので、みんな当たり障り無く過ごしている。
そして、私にはのんきだの、苦労を知らないなどと、何故かそういうお小言が飛ぶ。
私は段々味のしなくなったお弁当を、急いで口に運んだ。
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