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『きっと分からないと思うよ、腹出てるし、背も高くないし、そんなに収入もないただのアイドルオタクだから』
「それでもいいよ、声は覚えておくから」
『はいはい、その時はお手柔らかに』
今度は完全に一線引かれなかった。
むしろ何かヒントをくれたようにすら思えて、なんだかドキドキする。
思い込みかも知れない。
でも今のオサムさんの言葉は、私には違って聞こえた。
「今までありがとうございました。
友達からちゃんと独り立ちして、自分を大切にするようにします」
『うん、頑張らずに楽しんで。
それと・・・・・・友達のことは、あんなこと言っておいてなんだけど、もう少しだけ広い心でみてあげても良いかもしれない。
でも、無理はしないで。
・・・・・・では』
「・・・・・・はい」
どっちも最後はさようならとは言わなかった。
そして画面には通話終了の表示。
ヘッドセットを取り、机の端に置いていたスマートフォンを確認すると着信ランプが光っている。
開いてみれば、そこには彩からのメール。
「さてはて、鬼が出るか蛇が出るか」
私は少しだけ笑いながらそのメールを開いた。
END
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