248人が本棚に入れています
本棚に追加
/194ページ
私、林清香(さやか)は恋に落ちた。
その人は、同じ部署の直属の上司。
私とは10歳くらい上で、転職組で即戦力としてこの会社に入った。
本当に見事な手腕で仕事をこなし、そして男性女性関係なく気遣いをする。
そんな人を私は初めて見た。
大抵の男性上司は、気に入った女の子だけ甘かったり、若い子だけ甘かったりで、同性まで配慮する人なんていなかった。
けど、あの人は違った。
人一倍仕事をしているのを側で見ていた。
私が一度ヘマをしたとき、彼がフォローを即座にしてくれた。
あの時の鮮やかなフォローは未だに思い出すと、感動する。
でも後で、1人だけ会議室に呼び出された。
私はこっぴどく叱られることを覚悟していた。
だけど彼は、どこがまずかったのか、どう直すべきか、事細かに指摘し、そんなに私の仕事を見ていてくれたのかと驚いた。
そして彼は言った
『君の努力はわかっている。だけどこれは仕事だ。
失敗なんて人間だから誰にでもある。
要はその後のフォローがどれだけ出来るかだ。
場合によれば逆に信用を得る場合だってある。
そこを踏まえて再度頑張りなさい』
と。
彼は甘やかしも無意味な叱責もしなかった。
私のためを思って言ってくれている、それが全てから伝わってきた。
不謹慎だけど、とても嬉しかった。
最初のコメントを投稿しよう!