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またそれとは別に、偽帝が議政官らを慮っていると印象付けるためにも、今、厳しめの質問に応えさせておく必要があるだろう。
偽帝の穏やかな回答を冷静に採点する。さすがの及第点、と密かに安堵の息を吐いた。
しかし内心ではざわつかざるを得ない。
一年で暴かれてしまったことへの戸惑いは大きい。もう少しこのまま持たせるつもりで偽帝サイドをバックアップし、厳重に禁秘としてきた筈だった。
一体、何が起きたのだ。
こんなことで焦りはしない。ただ、予定外の事態を怒りと共に噛み締めた。
偽帝をどう処するべきか、真帝の即位式についても考えねばならない。そもそも、どこからどこまでを公にするべきなのか。年配者の多い議政官を以てしても、この珍事を直ぐに判断することは困難だった。
一旦休憩を挟むこととし、俺は太政官庁内にある執務室に引き上げ通常業務をこなす。
幾ばくも経たぬ内に、咳払いが聞こえた。
「どうした」
「桃宮がおみえです」
「失礼しまぁす」
俺が返事をする前に、世にも軽い声を発しながら長身の青年が入ってきた。
「お疲れさまでぇす」
「審議が長引き、桃宮こそお疲れになりましたでしょう」
最敬礼にて迎え、床を見つめたまま彼が部屋の奥に進み入っていくのを感じ取り、その後ゆったりと顔を上げた。
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