21.天使への誓い

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踏み込んだ先に待ち構えていた、 ボディーガードを一蹴し、 後妻とリビングで寛いでいた ジョージの父親に謁見する、椎名。 父親は憤怒していたが、 椎名は涼しい顔で受け流し 「ジョージ様の婚約者様に脅しをかけた  証拠書類です」 と言ってテーブルに書類や写真を差し出す。 一瞬表情が曇りながらも 「なんだと…?何故ワシがそんな事を  しないといけんのだ。こんなもの知らん」 と一瞥する父親。 それを見越したのか、椎名は 「そうおっしゃると思っていました」 と不気味な薄ら笑いを浮かべつつ 後ろ手に横山の会話のデータを流した。 明らかにジョージの父親の声である。 疑っていた様子の後妻も、 「堕胎させろ。」と吐き捨てる様に 言った言葉に驚愕している様子だった。 「ちなみに、こちらは声帯認証システムで 99%の確率でお館様と一致されております」 と涼しい口調で答える。 それでも知らん。と通す父親。 すると椎名は、ブリーフケースから 年季の入った書類を差し出した。 それはジョージの母親の旧家から 信託、授与される財産の明記だった。 何十億と広大な海外の土地の分与が 記載されたソレには明記事項があった。 それは 1. ジョージ本人の意思でスイスにある銀行から相続を受ける事。 2.引き出し時には、相続者立ち合いの元、  税理士や会計士を付け書類を確認する事。 3.ジョージに実子が出来た場合、  実子にもこの権利が与えられるとする事。 つまり、巨額な金額はジョージの意志が 必要であり、又実子にもそれが可能と いうことだった。 大宮家としての"コレは"会社が傾いた時に 再建出来る様に何年も封じてきたいわば ジョーカーの様な切り札であった。 だからジョージを生かしていると言っても過言では無かった。 しかし、ジョージは何年経っても 母親の金を崩そうとはせず、 会社は自己の力で再建させ、 この契約を締結していたのだ。 凍結しているだけならまだいいが、 困るのは実子が出来た場合の大宮家である。 子供の時から婚約者を作ったりしたもののジョージの関心を惹くことは叶わず、 どうしたものか…と考え混んでいたのだろう 打開策を打つ前に 特定の相手に執着が無かった ジョージがレナという相手を 見つけてしまったのだ。 その2人の様子に、苦肉の柵として 嫌がらせを行なっていたようだった。 「それがなんだと言うのだね…?」 と咳払いをする父親。 椎名は、そこで最後の書類を取り出した。 それは、父親の負担している借金の記載額 それに新たな愛人の姿が映し出されている 写真だった。 「レナ様が…邪魔だったのでしょう⁇」 と冷たい声で伝える椎名。 そう、多額の借金の返済や愛人に渡す金が 父親には必要だったのだ。 後妻はこの惨状を知らなかった様だ。 後妻の事も切るつもりであったのだろう。 「なんてヤツなの…!!」と 涙を流しながら父親を平手打ちする後妻。 何年も付き添い、細やかに尽くしてきた 相手からの仕打ちに激怒した様子で その場を後にしていく。 呆然とそれを見つめる父親。 それを見ながら薄ら笑いを浮かべながら 椎名は「あぁ、そうでした。横山さんからも 貴方の関与を示唆する証言を頂いております。 警察にジョージ様への傷害、レナ様への嫌がらせ、脅迫、殺人未遂教唆等行為について こちらから被害届を出して参りましたので近々お達しがあるかと思います。」 と伝え、振り向き様に 「次やってみろ。命は無いと思え。  ジョージ様からは殺せと命じられている」 と冷ややかな声を掛けると 父親はブルブル震え膝から崩れ落ちた。 あいつは邪魔だが、まだ使える。 殺さないで生かしておいたのは 椎名の打算的な考えだけだった。 念のため、部下に今後の同行を 伝える様電話をかける。 そう、次何かした場合… 直ぐに対処(殺しが)出来る様に。 ここまで鮮やかに対応した椎名は 一息つくとその大きな屋敷から 長い足を出した。 そして、車へと乗り込み 本社に戻るのであった。 主人の留守を守り、又 その行方を探す為にーー
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