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01_道行
帝都を出てからの俺は結局、忠告を何一つ受け入れていなかった。
師匠であり上司でもある帝国軍相談役、クレシュの「今は自分の身体を嫁さんのものだと思え」という言葉も忘れたわけではなかった。が、しっかりと腹に落ちたわけでもない。あるのはただ、目的地である学術都市、オルセンキアに一刻も早くたどり着くこと。そのためにまず、街道に沿って東に進み、一秒でも早く帝国第二の都市ルクシアの門をくぐることだけだった。
当然だ。俺の女房は息もせず心臓も動かさず、それでも眠ったように温かく美しいままなのだ。どんなカラクリでこんな目に遭わされてるのか知らんが、原因も状態もわからない以上、いつ本当の死に向かうかもわからない。とにかく、一刻も早く、一人でも多くの医者に診せて、ひとつでも多くの治療を試したかった。
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