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はじめのうちは、宿場町を一つずつ訪ねて医者を探し、プライムを診せた。だが、医者に診せればそれだけで半日以上潰れる上、町医者どもは揃って頭を抱える。死亡診断したがる医者も多かった。流石に毎回ぶん殴ってもいられない。帝都最大のコアリア病院の院長の診立てを伝えるようにした途端、埋葬したがる医者はぴたりといなくなった。が、今度はそれを聞いただけで匙を投げる奴が増える。半日費やして、ほとんどが現状を再確認するだけの無駄足。馬鹿馬鹿しいにもほどがある。秘境の村や異文化の町ならともかく、街道沿いの町医者に、特別な知識や技術があるとも思えなかった。次第に毎回医者を探すのが億劫になる。食料と燃料が潤沢なら、町に寄る時間も無駄に思えるようになってきた。しまいには、宿に泊まる時間さえもったいなくなってくる。宿場町は俺にとって、物資の補給基地でしかなくなっていった。
道中も、最初はセオリー通りだった。日中は歩き、夜は野営してメシを炊き、朝まで焚火の前で眠る。だが、荷重を受ける両肩は赤く腫れて痛み、一晩休んだくらいじゃ回復しない。さらに野営中は、小型の魔物が現れてはいちいち睡眠を阻害した。もちろん、いくら眠っていようとも、この辺りの魔物や獣どもをあしらうのは戦闘なんて大層なもんじゃない、息の根を止めるだけの作業だ。が、そんな相手でもいきなりプライムに食らいつかれでもしたら、取り返しのつかないことになる。必然、警戒レベルは上昇し、眠りは浅くなるばかりだった。休んでも歩いても疲れが変わらないなら、歩いたほうがいいに決まっている。
こうして俺は、夜はランタンの明かりを頼って歩き、野営をしないことにした。少し値は張るが、メシは調理の要らない干し肉や焼き菓子を調達すればいい。これなら、短い小休憩を取るだけで済む。行軍速度は飛躍的に向上した。
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