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02_宿場
冒険者が無一文でも宿に転がり込めるのは、泊まり込みながらギルドの依頼を受け、金を稼いでから支払うという慣例があるからだ。宿屋の多くは冒険者ギルドを兼ねる。冒険者ギルドの公認宿は、ギルド本部から発給される看板を掲示しているからわかりやすい。詳しいことはよく知らないが、周辺の依頼をまとめるために、村や町の規模に合わせて公認宿の開設軒数が決められているそうだ。帝都やルクシアなどの大規模な都市でもない限り、大抵の村や町には公認宿は一つしかないのが通例だった。
俺の場合はプライムがいるから、オルセンキアまで仕事を受けるつもりはなかった。そのための路銀だったわけだが、この状況では背に腹は代えられない。プライムの安全を確保できる場所を作って一仕事、腕を振るわざるを得なさそうだ。
「まさか……スコウプ・ネレイド! あんた、新しいA級ハンターのスコウプか!」
左手の刺青を見せた途端、横柄だった宿屋の主人の態度は一変した。俺の名前を言い当て、英雄を見るように目を輝かせる。帝都から離れてかなり経つと思っていたが、このあたりではまだ、A級ハンターは憧れの的でいられるらしい。
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