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とっておきという広々とした部屋に通され、宿代は要らないとまで言われたが、そうまでしてもらう義理はない。たっぷり一晩休んでから、こなせそうな仕事をすべて請け、プライムを宿の部屋に残して俺は仕事に出た。
午前中にゴブリンの巣穴を一掃し、午後になる前に夜盗のアジトを特定、逆に寝込みを襲う形で夜盗を追い払うと、アジトからは捜索依頼の出ていた宝石や鏡が次々と出てきた。夕方に畑に出るというタヌキの化け物を待ち伏せし、暗くなる前には首と尻尾をたたき切って、宿に戻ってくることができた。
DランクやCランクの仕事ばかりだったが、金持ちの宝飾品奪還の仕事があったのは運が良かった。都合5つの依頼を解決し、盗まれた財布の中身の3分の1程度の金を一日で取り戻してやった。少々色をつけて宿代を支払い、頼んでもいないのに出てきた宴会のように豪勢な夕食を平らげ、一晩きっちり眠ってから、俺は宿場町を後にした。補給していこうと考えていた携帯用食料は、礼を言おうと宿の玄関で待ち構えていた依頼者たちが、持ちきれないほど用意してくれた。
クレシュには「A級ハンターの証をめったやたらに見せびらかすな」と言われていた。が、こいつはまるで快適な旅を保障する旅券だ。俺はこの一件に味を占め、派手に金を使っては宿場町で左手の刺青を見せて仕事を請けるという、流れ者のハンターそのものの生活を続けていった。
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