02_宿場

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 街道といっても何箇所かの難所がある。突き当たったのが、巨大な魚竜が棲むと言われる急流、フラファタ川だった。渡し舟すら出せないため、南に大きく逸れて湖まで出て、そこから船で渡るか、上り坂をまっすぐ北に進んでウォルス・フラファタ自治領に入り、高額の通行料を支払って領内にある吊り橋を使うか、旅行者は選択を迫られる。  本当に棲んでいるなら伝説の魚竜を相手にしてみたい気持ちもあったが、今は遊んでいる暇はない。当然、俺は北ルートを選んだ。持ち金は心もとなかったが、足りない分は自治領内の宿で仕事をすればいいだけの話だ。  さすがに帝都から離れてきただけのことはあって、フラファタ川手前の宿場町に俺の名前を知っている住民はいなかった。宿の主人だけがようやく刺青を理解したかと思えば、怯えたように驚いた様子を見せる。初めての、意外な反応だった。A級ハンターライセンスは、状況に応じ殺人さえも許可される。都市を離れれば離れるほど、人殺しの証と思われる可能性があるのだと、クレシュは言った。それを思い出した俺は、宿泊を取りやめ、早々に町を後にした。  実際、徒歩で行く旅行者はほとんどが南ルートを使う。自治領が切り開かれる前は南ルートしかなかったというし、高額を必要とする北ルートを使うのは急ぎの商人や貴族がほとんどだ。当然、彼らはたいていが馬車で通ることになる。そこにちょっとした落とし穴があった。徒歩での移動を想定していない道には、徒歩圏内での宿場がないのだ。     
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