4人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
【00:50】
落ち着いていたのには、もちろん理由がある。
エリートサラリーマンである俺は、けっして準備を怠らない。
電車が無理な時のための代替策を用意してあるのだ。
車である。
マンションの駐車場に停めてあるのだ。
真っ赤なスポーツカーが。
備えあれば憂いなし、だ。
使用頻度は低く、維持費はかかるが、こういうピンチの時や、もしくは合コンする時に役立つだろうと購入しておいて正解だった。
残り時間は50分。
準備に手間取り、少し時間をロスしたが、大丈夫だ。
スマホのナビで調べてみれば、車での所要時間は40分とある。
いける。
俺は愛車に乗り込み、エンジンをかける。
あまり運転はしていないのだが、しかしそれも備えあれば憂いなし。
大丈夫。チェックしてある。
右がアクセル。
左がブレーキだ。
「まったく、チョロいぜ」
さぁ、一陣の風となり、いざ、行かん。
俺は華麗にアクセルを踏み込む。
車は思いっきり、バックした。
最初のコメントを投稿しよう!