達磨様に会いに行こう

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 すると、東山が苦虫を噛み潰したような、非常に悔しげな表情をしている姿が目に入った。だが、朱里と目が合った瞬間、絵を切り替えたように、明るい表情に変化した。まるで役者だ。  そして、それは他の人間も同じようなものだった。  一通りテーブルの上を綺麗にした朱里は、立ち上がった。頭の中ではすでに、危険を知らせるレッドライトが明滅していた。  「ちょっとお手洗いで綺麗にしてきます」  必要ないという杏子を引きずるようにして、朱里は部屋を出る。部屋中の人間が、凝視していることを背中で感じながら。  「だから達磨様にするつもりだよ。あの人達」  トイレで、杏子に説明しても、杏子は信じようとはしなかった。  「達磨様ってデマなんでしょ? おじいさん達、皆言ってたよ。そんな話知らないって」  自分で仕入れて来た話にも関わらず、杏子は達磨様自体を疑問視しているようだ。  「それが嘘なの! 私達を騙すために知らないふりをしているのよ。私聞いたんだから。村の人達が達磨様の話をしているのを」  「どういうこと?」  朱里は杏子に、この場で村人達の会話を盗み聞きをしたことについて話をした。それに加え、宴会場にて、村人達の様子が妙だったことについても言及する。  しかし、それでも杏子は信じようとはしない。疑り深い顔でこちらを見ながら言った。  「朱里が疑心暗鬼になっているだけでしょ」     
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