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「よかったな」 水の張っていないプールに腰掛ける私に届いた下からの真人の声は珍しく震えていた。 中学までは私の方が背が高かったはずなのに、高校に入る頃には同じくらいになり、高二の夏には完全に逆転していた。 今では二十センチ程高い真人の事を、私はいま久しぶりに見下ろしている。 卒業式の今日、真人と二人で過ごす最後の時間。 昼休みになると決まってこのプールのベンチで二人だけでご飯を食べた。 真人曰く、教室はうるさくて落ち着けない、ここは静かでいいとのことだった。 その静かで落ち着く空間が、今だけは、これからの私の孤独感をより一層増幅させた。 「本当にそう思ってるの?」 「あぁ、活樹なら心配いらないよ、安心してお前の事を任せられる」 「……そう」 「なんだよ、何か不安なのか?」 「そうじゃないけど」 「これ、内緒だけどな。あいつ、一年の頃からお前の事好きだったんだよ、だからあいつの気持ちは本物だって。俺が保証する」 そうじゃない。そんな事を聞いてるんじゃないよ。 真人以外の人と付き合うんだよ? 真人、嫌じゃないの? 心の中がぐちゃぐちゃになってる。でもこんな事言える訳ないじゃない。言ってどうするの。それで真人が海外に行くのをやめる? 冗談じゃない。それは私が一番よくわかってる。それに、やめて私と付き合うなんて、そんな真人の事を好きになった訳じゃない。 整理の付かない私は結局、また何も言えなかった。
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