一.

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一.

 B社の営業マンが言った。「我が社のこのミシン、まさに未来を先取りする製品だ!」  S社の営業マンも負けじと言い返した。「いや、我々が開発した最新鋭のキッチンこそ、未来そのものですよ!」  ここは日本国内の家庭電機メーカーが一堂に会する見本市会場。各社のブースでは、各々が技術の粋を集めて作った新製品をずらりと展示していた。その一角で、突然二人の男が言い争いを始めたのだ。 「うちのミシンは画期的、最先端技術のかたまりなのだ」 「それを言うなら、ぼくのところの先進的キッチンこそ」  ミシンを得意とするB社とシステムキッチンが主力のS社のブースは、たまたま隣同士になった。二人の営業マンはきわめて仕事熱心で、かつ自分の会社が作る製品を熱烈に愛していたのである。両社のみならず、出展企業は製品の宣伝に余念がなかった。そのせいだろう、売り込みに熱が入れば入るほど二人の間に対抗心が燃え上がるのは、ある意味当然の結果とも言えた。 「ふん、たかが台所ごときで偉そうに」B社の男が蔑むように言った。     
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