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第2章 話して
ほんの冗談だった、すぐにでも「なんてね、嘘ですよー」なんて言っていれば訂正出来たんだけど、少女の目があんまりにも希望を見ている目だったから嬉しくて、止まれなかった。
「秘密にしていようと思ったんだけどな、バレてしまったのではしょうがない。懐かしいな~」我ながら演技力は微塵もないと思うが少女は全てを真実と受け止めていた。「やっぱりね、私見た時からわかったよ
私、将来はとっても綺麗な大人になるって言われたもん。」おそらく、この時の私は褒められ慣れていないことが元となり少女が見てもわかるくらい照れて挙動不審だっただろうと思う。「そうだよ、貴方は将来とても綺麗になるんだ。」恥ずかしく声は震えていたと思う。「ねぇ、私将来はどんな生活送ってるの。」少女の好奇心は生活に向いた、将来の自分が目の前に現れたのならどんな生活か、どんな人達に囲まれているのかなんて質問に行き着くのは必然的だとは思う。私は少女の顔を見ずに、ずっとうつむいて焦って頭をめぐらして世間一般的な幸せを考えようとはした、だけど思いつかなかった、だから咄嗟に言葉として出てきたのは少女の求める少女自身の未来ではなく、少女に嘘をついている私自身の今だった。
「出版社の仕事がとても忙しくて、眠れてないかな。」自分でも自分がしている事の罪の重さはわかっている少女の未来の希望を潰すような行為をしてることぐらい。言い終わったあとは少女の顔を見れなかった。
「それだけ、頑張って人々に本を送る仕事をしてるんだね、私のおかげで本を手に入れた人の笑顔が目に浮かぶよ。ありがとう未来の私。」少女の目や顔は明るく笑顔で私をまだ希望の眼差しで見続けていてくれた。「だけど、眠らないのはダメだな。私怠け者だからお昼寝大好きだもん。だから、今日はタイムマシンでもう未来に帰って寝た方がいいよ。また来週の水曜日に私に会いに来てね未来の私、もっと未来の話し聞きたいもん。」そう言いながら少女は私の背中を小さく細い手のひらで林の出口の方へ押していく、出口へ出ると少女はバイバイと手を振ってくれていた。
少し歩いて後を振り返っても少女は手を振ってくれていた。私も手を振り返すと少女は大きな声で「おやすみなさい。」と私を最後まで送ってくれた。
少女に嘘をついてしまった以上少女が満足するまで自殺は辞めておこうと電車の中で計画を立てていた。
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