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第一話 「見えない階段」
窓から空を見上げる。桃色の花びらが綺麗に揺れ、
次第にはらはらと落ち、木々は桃色からきつね色の衣を身に纏い、
最後に白銀の衣装へと着替える。
俺はもう何年も、何年もこの同じ景色の中で生きている。
ベッドから見えるこの景色だけが僕の全てだった。
急性骨髄性白血病。それが俺へ言い渡された病名だった。
この病気が重い病気なのかそうでないかは言い渡された時の
父さんと母さんの顔を見てわかった。
それにこの病気がどんな病気なのか、治るのにどれくらいかかるのか、
また、もう先は無いのか・・・。
それを知るのが少し怖くて自分でも調べようとはしていない。
ただ毎日終わることのない体の熱とだるさ。貧血。それを緩和するための
投薬に日々を消費するだけ。
看護師 みらいくーん。環 未来(まどか みらい)くん。起きて。
未来 ん。
看護師 おはよう。未来くん。ご飯持ってきたよ。
未来 うん・・。
看護師 気分はどう?
未来 うん。普通。
看護師 そう。たまにはちゃんと食べないとだめよ?あと、薬ここに置いておくからね。
未来 うん。ありがとう。
(看護師さんが部屋を出た後、ようやく身体を起こす。
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