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「なぜ俺がこんなところに……」
事の発端は昨日。俺は父上に呼び出されたかと思いきや突然下界へ行けと命じられた。
「何故!?」
「おぬしは学が足りん」
「学ですと!? お言葉ですが父上、私はこの国で最難とされる院を首席で卒業いたしました!」
「勉学のみが全てではない」
「どういうことです?」
「下界で学ぶことも多かろう」
現在に至る。
「全く。父上は何を考えておられるのだ」
空の青さは上界の平和。俺はため息を漏らした。
上を見ていたせいか、足元に何かがぶつかる。
”それ”はまっすぐ俺を見てこう呟いた。
「きらきら……」
小さな”それ”はとても汚れていた。
「うっ……」
臭い。これが”ニンゲン”というものなのか?
髪は乱れ、衣も所々破れている。
俺は無視し、家へ帰ることを決めた。
しかし、”それ”は俺の後ろをついてくる。
「ついてくるな」
「きらきら」
「うるさい、黙れ」
家についた。
しかし”それ”は相変わらず俺の後ろでまっすぐ俺を見つめていた。
「きらきら」
こいつさっきから同じことを繰り返している。
「鬱陶しいな」
俺はそのまま扉を閉めた。
「腹が減ったな」
しばらくして俺は、こんびにえんすすとあ、というものに行こうと家を出た。
扉を開けると何かが扉に当たる。
「お前っ……」
先ほどの”ニンゲン”が扉の前に座っていた。
「きらきら」
「お前はそれしか話せんのか」
視線を感じる。
何やらこっちを見ながらこそこそと何かを話している数名。
「無礼な奴らめ」
俺は小さく舌打ちし、扉の前に座ったままの奴を家に入れた。
「湯殿に行け」
「……?」
先が思いやられる。
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