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6-4 アンサンブルのパートナー
真智子が一緒に組んでいるアンサンブルのグループは春休み中からはドビュッシーの『牧神の午後への前奏曲』とシューマンの『アンダンテと変奏Op,46』に取り組むことになっていた。先ずは長井絵梨との二台のピアノの演奏の息を合わせることがとても重要で、ふたりの演奏の息が合っていないと管弦楽の演奏にも影響が出てしまう。どちらの曲も繊細で細やかな曲想なので今まで練習不足だった真智子には明日はまだ上手く弾きこなせないことは明らかだった。真智子は練習不足の経緯を演奏パートナーの長井絵梨に伝えるべきかどうかを迷っていた。長井絵梨は実力があり、いつも練習熱心だったため、春休み中で諸事情があったとはいえ、真智子の練習不足のことでいらいらさせるのではないかと心配だったからだ。経緯を話せば少しの期間は目を瞑ってくれるかもしれない―それとも、どんな経緯も聞く耳なしだろうか―真智子は電車の中で悩んだ末、どちらにしても練習不足だし、下手な演奏で迷惑をかけないためにも先ずは練習不足であることを絵梨に謝ることにし、電車の中からメッセージを送った。
―このところ、プライベートでいろいろあって練習に参加できなくてごめんなさい。明日からは練習に参加できると思いますので、よろしくお願いします―
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