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「絵梨さんは芸大は受けた?」
「私はもともと桐朋女子高の音楽科からの推薦で桐朋短大に入学したから、芸大は受けなかった。芸大は特別な才能がないと受からないと思うし」
「そうだよね、私も芸大は落ちたし、桐朋短大も最終選抜でぎりぎりで入れたって感じかな」
「今、一緒に弾いていて思ったけど、真智子さんの演奏は柔軟性があるから、きっと受かったのよ」
「そうかな」
「少なくとも私はそう思ったし、一緒に弾いていて安心できた」
「ありがとう。絵梨さんのドビュッシーも淀みなくてきれいな演奏だね」
「ドビュッシーの演奏で評判の高木真智子さんと一緒にアンサンブルすることが決まって、一緒に練習する日を楽しみにしていたのよ」
「えっ、そうなの?」
「だって、この前の学年発表会での『ベルガマスク組曲』、とても良かったし印象に残ってたわ」
「絵梨さんは確か、シューマンの『飛翔』を弾いてたわよね。迫力あったし、軽やかで素敵だった」
「ありがとう。じゃあ、次の曲『アンダンテと変奏』に移ろうか」
「えっと弾き始めは今度は私だったね」
「そう、準備ができたら、合わせるからよろしく」
真智子は深呼吸すると『アンダンテと変奏』のはじめのパートを弾き始めた。絵梨も真智子に続いた。
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