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6-6 叔父との会合
―そして、約束の日―。
待ち合わせ場所の練馬駅で会った慎一と真智子は先ずは慎一の下宿先の叔父、真部幸人の家に向かった。
「慎一の叔父様っていつ頃奈良から東京にいらしたのかしら?」
真智子は慎一と一緒に歩きながら、それとなくこれからはじめて会う慎一の叔父の話題を出した。
「学生の頃からかな。東京の大学に合格して、そのまま東京に住むようになったらしい」
「ずっとお一人なの?」
「弁護士の仕事をしていてね。何かと大変みたい」
「えっ、叔父さん、弁護士さんだったの?」
「うん。なんとなく今まで話すきっかけもなかったけどね」
真智子は思わず緊張で胸が高鳴った。
「慎一の身近な人ってなんとなく偉い雰囲気だよね」
「そんなことないよ。叔父さんは会えばわかるけど、とても気さくな人だよ」
叔父と一緒に住んでるマンションに着いて慎一が玄関のチャイムを鳴らすと、叔父、真部幸人が出てきて真智子に向かって挨拶をした。
「こんにちは。はじめまして。真部幸人といいます。慎一君や兄から話は聞いているけど、君が慎一君と付き合っている高木真智子さんだね」
「はい、高木真智子です。はじめまして」
「忙しいところ、わざわざありがとう。ここは狭いから近くの喫茶店で一緒に食事でもしましょうか」
ジャケット姿で出てきた真部幸人はまだ若々しく、慎一と並ぶとまるで兄弟のように見えた。
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