6-8 ショパンの子守歌

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6-8 ショパンの子守歌

 翌々日から新学期が始まり、真智子は桐朋短大でのスケジュールに追われていった。アンサンブルの自主練や個人レッスンのこともあったので、桐朋短大へは家から通い、ピアノが届く日には必ず新居のマンションを訪ねると慎一と約束をし、それまでの準備は慎一にまかせた。一方、慎一も新学期を迎えたが、芸大での授業はそれほど立て込んでなく、個人レッスンの方も引っ越しの事情を話してスケジュールに余裕を持たせ、先に新居での生活を始めていた。そして予定通り、グランドピアノとベッドが運び込まれ設置されると、真智子を迎えるばかりの状態で、慎一はさっそくピアノの前に向かい、手慣らしの練習を始めていた。  新居にピアノが届いた日曜日の朝、真智子はいつも通り朝食を採り荷物を整えると居間で寛いていた父と母と弟に向かって挨拶した。 「お父さん、お母さん、博、そろそろ出かけるね」 「まだ、学生なんだから、学業をおろそかにするんじゃないぞ。まあ、慎一君がついてるなら大丈夫だと思うけど」 「慎一さんの迷惑にならないように、何かあったら連絡しなさいね」 「演奏会もあるから、また、連絡するよ。私の演奏、また聴きにきてね。じゃあ、いってきます」 「いってらっしゃい」 孝と良子と博は玄関先まで出て、真智子を見送った。
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