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6-9 朝の目覚め
翌朝、一人で目覚めた真智子は一瞬、自分がどこにいるかわからず辺りを見渡し、すぐに昨日、慎一のマンションに着いた途端、熱を出して、慎一が弾くピアノに聴き入りながら、眠りについたことを思い出した。
―慎一はどこにいるのかしら?
ベッドから出てピアノの部屋に真智子が入ると、ピアノの部屋にあるソファーで眠っていた慎一が目を覚まし、部屋に入ってきた真智子に気付いた。
「真智子、気分はどう?」
「昨日よりは熱が下がったみたいだけど、今日は学校はどうしようかな。慎一は私に構わず出かけてね」
「あまり無理しない方がいいよ。念のため近くのクリニック、教えておくよ。すぐに診てもらえると思う。なんならタクシー呼んでいいからね」
慎一はクリニックの名前とタクシーの電話番号をメモした紙を真智子に渡した。
「着いた早々、さっそく迷惑かけちゃったね」
「僕が無理させちゃったし、疲れが出たんだからしかたないよ。早く治るといいね」
「昨日はショパンの子守歌をありがとう。とっておきの眠り薬だったよ。慎一の弾くピアノの音色は最高だね」
「真智子も早く元気になって、僕にピアノを聞かせてよ」
「うん。早く治さないとアンサンブルのメンバーにも迷惑かけるからね」
「朝食はパンとコーヒーとサラダの軽食だけど、いいかな?真智子の分も用意しておくから、真智子はまだ休んでてよ」
「あ、コーヒーはちょっと。牛乳とかジュースとか。なかったら、お水でいいよ。今日は大事をとって学校休むね。連絡しておかないと」
真智子は携帯電話を鞄から出すと長井絵梨に連絡を入れた。
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