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「うん、なかなか美味しいよ。」
ネオンカカオで作られたチョコレート――厳密にはチョコレートではないが――をほおばりながら、絃史は言った。
ネオンカカオは優蘭の母が惑星「ネオン」で発見した植物である。外観は地球のカカオとは全く異なり、ブドウのような房状の実をつける植物である。優蘭の母はネオンカカオの種子を焙煎し、すり潰してペースト状にしたものに、バターの木の実から採った油脂を加え、さらに砂糖を加えて固めるとチョコレートのような味わいを持つスイーツが出来ることを発見したのだった。
「ありがとう。でも、どうしても香りが弱いらしいの。」
優蘭は言う。
優蘭の家系、特に母方の家系はチョコレートに対する思い入れが強いらしい。優蘭の母がネオンカカオを見つけ出したのは、本物のチョコレートの味を知る優蘭の高祖母、ひいひいおばあちゃんのためであった。優蘭の高祖母は地球で生まれ、移民船に乗り込んだ世代である。その高祖母はチョコレートが大好物であったらしく、「ネオン」に旅立つにあたって、何を持っていくか考えた末に、チョコレートの原材料となるカカオの種子を持っていくことにしたのであった。
優蘭の母はその高祖母が地球から大切に持ってきたカカオの種子を受け継いでいたが、高祖母が生きている間にカカオの収穫に至るには無理があり、どうにかチョコレートを食べさせたくて、このレシピを編み出したという。優蘭の母が高祖母のために作ったネオンカカオのチョコレートは、嗜好品が少なかった惑星「ネオン」の住民に受け入れられ、今では多くの人が口にするようになっている。
優蘭は高祖母から母へと代々受け継がれた願いを現実のものとするべく、地球の植物を惑星「ネオン」で栽培する研究を母と共に進める傍ら、高祖母から受け継いだカカオの種子を増やし、大規模なカカオの栽培を行うために準備を進めていた。
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