4/8
前へ
/8ページ
次へ
「そうそう、今日には間に合わなかったけど、カカオの木がついに実を結ぶところまで来たの。見てみない?」  優蘭は絃史を誘った。絃史はそれに頷くと、優蘭と一緒にカカオが栽培されている地球型人工気象施設に向かった。  カカオの栽培には平均気温が27℃程度で年間を通じて気温変化が少なく、年間降水量が1,800mm前後、湿度が70%以上という高温多湿な環境が適しており、地球上においても栽培可能な地域は極めて限られている。しかも直射日光が苦手というおまけつきであり、そのため日光を遮るための高木、日陰樹(シェイド・ツリー)が必要という気難しい植物である。  そんな気難しい植物であっても、地球型人工気象設備内であれば、生育させるのはさほど難しくない。地球型人工気象設備内では、温度や湿度、日照時間や光量、そして微生物環境に至るまで完全にコントロールできるからである。  問題は惑星「ネオン」の環境下に出した時である。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加