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「どう、わたしが総理大臣になったら、その権力でパパを刑務所から釈放して自由の身にすることは出来る? それが出来るならわたし、あなたのいうとおり日本の総理大臣だろうが大統領だろうが、なんでもなったげるわ。総理大臣になるのはパパの自由と交換よ、それがわたしのだす条件」
「なるほど交換条件ですか」
池沼さんはタバコの煙を吸い込むんでふーっと吹きだした。それから急にニヤッと厚ぼったい唇を歪ませて不適な笑顔を作った。
「さくらさん、わたしも歴代の総理大臣につきそって20と余年、この目で政界の隅々まで見てきた男です。恐ろしい事に、この権力の世界では白を黒に変えることなどは、子供にカニカマチャーハンを本物の蟹チャーハンと信じ込ませることよりもずっと簡単なことなんです。分かりました、そういう事ならお任せください。この内閣総理大臣秘書官、池沼彰太郎が忖度(ソンタク)いたしましょう」
「やった、そう来なくっちゃ」
立ち上がった私は指をパッチンと鳴らして、
「交渉成立、決まりね!」
2
ガチャッと裏口のドアを開けて、池沼さんが夕方の涼しい空気と一緒に台所に入ってきた。馴れ馴れしくママの肩に手をかけながら池沼さんは言った。
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