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「お母様、彼女、さくらさんの政治の才能は本物です。この内閣総理大臣秘書官、池沼彰太郎を相手に、いきなり交渉術で取引を仕掛けてきた総理大臣候補はさくらさんが初めてです。これは持って生まれた天性の資質、たぐいまれな指導者としての器の証と言えるでしょう。大丈夫、さくらさんならきっと、この国に迫る絶望の未来から私たち国民を救い導いてくれます」
五月の低い太陽がちょうどいい高さになった。開けられたままのシンクの窓から強い夕日が台所全体に差し込んできて、部屋の中を赤く染める。遠くの方、河川敷の土手の方から豆腐屋のいつものチャルメラの音が聞こえてくる。
「イテ、イテテテテテ痛いです痛いです奥さん!」
セクハラをして手をつねられた池沼さんの声に、外で待機していた格下のおじさん達の忍び笑いが聞こえてきた。
「さあさくら、今夜は唐揚げよ。いっぱい揚げるから手伝ってね」ママは元気よく立ち上がると腕まくりして私にウインクした。
「はーいママ!」わたしもそんなママに負けないよう元気よく返事を返した。
総理秘書官達も(今日集まっていたおじさん達はみんな総理大臣秘書官なんだそうだ)唐揚げ用の鳥肉の買い出しなどを手伝ってくれた。
ママはこの日、甘辛星家の一日で揚げる唐揚げ新記録を樹立した。池沼さん達ももちろん、新総理誕生の前祝いとばかりに私たちと一緒にその唐揚げを食べて帰った。
甘辛星さくら政治信条その一
ご飯は沢山で食べた方が美味しい。お世話になるなら先にご馳走しておくこと。
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