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私も靴を脱いで上がろうと思ったけれど自分が靴を脱ぐスペースがない。ちょっとごめんね、足で革靴をよけてスペースを作る。ゴソゴソゴソッコト。あ、一番端の靴が斜めに傾いた。まあいいや、ここは私んちだし、優先されるのはこの私なのだ。
「たっだいまーママー誰か来ているのー」
玄関からすぐの廊下、そこからすぐ左にある昔ながらの細長いキッチンを、私はジャラジャラとしたスダレをかき分けのぞき込んだ。
台所ではビシッとした黒いスーツを着た人達がいて、家族四人サイズの小さな食卓にママと一緒に座っていた。食卓にはママと年配のおじさんが二人、それからママと同じくらいの年のおばさんが一人、あと立ったままのその人達よりもちょっと若い男性(ほぼおじさん)が二人いる。つまり台所には全部で5人のお客さん、それとママ、さらに今帰ってきた私、計7人もの人間が狭い台所にいて、すごく混雑してひしめき合っているわけだ。
「あ、さくらお帰り。ちょうど良かったわ、あんたもここにきて座りなさい」お客さん達と一緒に座っていたママが言った。
ママの言葉に座っているおじさん達が目配せした。
「どうぞこちらへ」座ったままの一番年配のおじさんが言った。そのおじさんより格下らしい正面の1人が立ち上がる。
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