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「どうぞ」と言われてもここは私のうちなんだけどな、などと思ったけれど、さすがに口には出さず人がいっぱいで狭い台所の中をおじさん達に「どうぞどうぞ」と促されるままに座った。格上のおじさんの正面、室内なのにサングラスをしている。白髪交じりの少し長めの髪を七三に分けて、いわゆるチョイ悪な感じのする渋いおじさんだ。もしかしてママ・・・・・・こちらあなたの新しいパパよ、なんて悪い冗談は無しよ。
「さくら、こちらはね」と話そうとしたママを手で制して、チョイ悪なおじさんが言った。
「初めましてさくらさん、わたしは内閣総理大臣秘書官、秘書室長を務めております池沼彰太郎と申します」そう言って、池沼さんは立ち上がって食卓ごしに名刺を差し出す。
「え、内閣総理大臣、とっ図書館?」
「秘書官です」
秘書官と言われてもよく知らないが、私はたいそうな名刺を両手でうやうやしく受け取った。
「ええっと、その内閣総理大臣秘書官ってそのあの、それってあの、えっ偉い人なんでしょうか!」と私。
「いーえめっそうもございません。総理大臣専属の事務員程度とお考えください」池沼さんは唇を歪めて言った。どうやら笑っているようだ。サングラスで目は見えないので、それがなんだか不適な感じの笑顔に見える。
「へーそうですか、事務員さんですか」わたしは周りのおじさんを見渡した。その割には周りのおじさん達は緊張して気を使っているように見えるのだけれども・・・・・・。
「それでその、総理大臣の事務員さんが私なんかに何の御用なんでしょうか?」わたしはドギマギして聞いた。
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