第一部 総理大臣になっちゃった。

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「ごもっともごもっとも、結構です。五分待ちます」池沼さんはそう言って席を立った。シルバーの重そうな時計を見て(きっと高級品だ)「おい、おまえ達」「はい、ボス!」「席を外すぞ」池沼さんが号令をかけると、それまで黙って成行きを見守っていた他のおじさん達はゾロゾロと列を成して台所を出て行った。 「それではさくらさんお母様、どうぞごゆっくり」そう言って池沼さんも台所を出て行った。玄関で靴を履くゴソゴソという音が聞こえた。  チクタク、チクタク  池沼さん達がいなくなって台所には私とママ、二人だけになった。机の上には池沼さんの忘れていったギラギラ光るサングラスがポツンとひとつ残されていて、うざったく私に光を跳ね返してくる。私はそのサングラスを手で押して光の角度を調整した。人が急にいなくなって静かになった台所では、食卓の上の時計の音だけがなんだか妙に大きく聞こえてくる。ついでに室温もグッと下がって肌寒ささえ感じた。私は単刀直入にママに聞いた。 「ママ・・・・・・私、総理大臣になってもいい?」  ママはフッと、一息ついて答えた。 「・・・・・・さくら、ママいつでもあんたの思い通りに何でもやらせてきたつもりよ。女優になったときもアイドル歌手になりたいって言ったときも、いつだってそうだったでしょう。だからもし、もしもさくらが総理大臣やりたいっていうなら、そのときはママ、もちろん全力でさくらを応援するわ」そう言ったママは、突然ハンカチを取り出して目頭を押さえた。     
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