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「さくらさんの・・・・・・お父様ですか? たしか元会社経営者で現在は脱税と粉飾決算の罪で服役中、ということでしたよね」池沼さんは胸ポケットから皮の手帳を取り出し、それをパラパラと捲りながら言った。
「そうよ、わたしのパパは脱税と粉飾決算の罪で警察に捕まってる。税金を安くすませるためにわざと損失を多く計上して税金を少なく払ったあと、今度は株主の印象を良くするために利益をドーンと水増して株価を思いっきりつり上げたの。それはもう手品のように、数字を多くしたり少なくしたり思いのままにね。パパ自分は天才だってとっても嬉しそうにしていたのに、何日かして私が学校に行っているうちに警察がきて、パパを刑務所に連れていってしまったのよ。それ以来ずっと、ママもわたしもパパには一度も会っていないわ」
「あああぁぁぁぁぁ、パパぁぁぁぁわたしを置いていかないでぇぇぇぇぇぇ」ママはパパを思い出して大きな声で泣き出した。
池沼さんはそんなママを哀れそうに見つめながら、手帳型ケースに挟んであった紙巻きタバコを取り出して火をつけた。
「そうですか、そのようなことがあったのですか」ふーっと、吸い込んだ煙を吐き出した池沼さんは、煙が目に染みたのか細い目をさらに細めている。
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