ダメ男製造機?

8/16
前へ
/158ページ
次へ
「コンシェルジュがいる…。」 由良はエントランスの豪華さに驚く。 お帰りなさいませと、声を掛けられて留衣子は一礼してエレベーターのボタンを押した。 「江藤さん、もしかしてお金持ち?」 エレベーターに乗り込み、聞いてみる。 「バリバリ働いて来たしね?旦那と二人で。ここは1年前に子供の事も考えて旦那が購入したの。ちょうどいいタイミングの出物だったしね。 15階までは一般の人で、上、5階部分はマンションのオーナーとか、ここの土地売った人とか住んでる。うちは15階。1503ね。」 「土地、売った人?」 エレベーターを降りてから聞く。 「旦那のおじいちゃんの遺産の一部が引っかかってたらしい。 狭い土地の本当にちょこっと。別に買わなくても建てれるでしょ?て思うくらい。」 「ああ、でもそういう小さなとこも、建設基準とか満たすには必要なんだってね?」 莉梨子が言うと、 「さすが、建築業の娘さんだね。」 と、江藤さんは笑いながら玄関の豪華なドアを開け、私達を中に招き入れた。 「リビングで取り敢えずくつろいでて?この子、寝かせて来るから。」 ベビーカーを広い玄関に起き、奥の部屋に入って行った。 私達は静かな足取りで、真っ直ぐ進みリビングに到着した。 「ひっろっ……。」 由良があんぐりしていると、莉梨子は既にソファに座っていた。 「ゆらさん、座ったら?」 「りりこちゃん、動じてないね?いや……もうなんかさ、私の世界と違いすぎて、どうして良いかわかんないよ。」 「ふふ…ゆらさんは素直でいいね。うちの父親が人の家に行くと、負けたと思っても認めたくないから、良いんじゃないか?こんなもんだろ?って言うの。 私はそこも嫌いだった。ゆらさんは反応が新鮮で好きだなぁ。」 「褒められてる?」 由良が言うと同時に、江藤留衣子がリビングに来た。 「褒められてるよ?今、お茶入れるね。」 キッチンの江藤留衣子に由良は聞いた。 「江藤さん、旦那様は?勝手に泊めていいの、ですか?」 「ああ…。良いのよ。いないの。」 「えっ?」 二人で驚いていると、お茶をお盆に乗せて持って来た江藤留衣子が言った。 「2ヶ月前に、事故で亡くなったわ。子供とこのマンション形見に遺してね。」 その言葉に二人は心から驚いた。
/158ページ

最初のコメントを投稿しよう!

524人が本棚に入れています
本棚に追加