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「コンシェルジュがいる…。」
由良はエントランスの豪華さに驚く。
お帰りなさいませと、声を掛けられて留衣子は一礼してエレベーターのボタンを押した。
「江藤さん、もしかしてお金持ち?」
エレベーターに乗り込み、聞いてみる。
「バリバリ働いて来たしね?旦那と二人で。ここは1年前に子供の事も考えて旦那が購入したの。ちょうどいいタイミングの出物だったしね。
15階までは一般の人で、上、5階部分はマンションのオーナーとか、ここの土地売った人とか住んでる。うちは15階。1503ね。」
「土地、売った人?」
エレベーターを降りてから聞く。
「旦那のおじいちゃんの遺産の一部が引っかかってたらしい。
狭い土地の本当にちょこっと。別に買わなくても建てれるでしょ?て思うくらい。」
「ああ、でもそういう小さなとこも、建設基準とか満たすには必要なんだってね?」
莉梨子が言うと、
「さすが、建築業の娘さんだね。」
と、江藤さんは笑いながら玄関の豪華なドアを開け、私達を中に招き入れた。
「リビングで取り敢えずくつろいでて?この子、寝かせて来るから。」
ベビーカーを広い玄関に起き、奥の部屋に入って行った。
私達は静かな足取りで、真っ直ぐ進みリビングに到着した。
「ひっろっ……。」
由良があんぐりしていると、莉梨子は既にソファに座っていた。
「ゆらさん、座ったら?」
「りりこちゃん、動じてないね?いや……もうなんかさ、私の世界と違いすぎて、どうして良いかわかんないよ。」
「ふふ…ゆらさんは素直でいいね。うちの父親が人の家に行くと、負けたと思っても認めたくないから、良いんじゃないか?こんなもんだろ?って言うの。
私はそこも嫌いだった。ゆらさんは反応が新鮮で好きだなぁ。」
「褒められてる?」
由良が言うと同時に、江藤留衣子がリビングに来た。
「褒められてるよ?今、お茶入れるね。」
キッチンの江藤留衣子に由良は聞いた。
「江藤さん、旦那様は?勝手に泊めていいの、ですか?」
「ああ…。良いのよ。いないの。」
「えっ?」
二人で驚いていると、お茶をお盆に乗せて持って来た江藤留衣子が言った。
「2ヶ月前に、事故で亡くなったわ。子供とこのマンション形見に遺してね。」
その言葉に二人は心から驚いた。
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