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仕事が忙しく帰れない時は不機嫌。
それでも暴力はない。
4日振りに夕方、早めに帰れたと喜んでアパートに入る。
「ごめんねー。忙しくて。今日は夕ご飯作るからね。」
「おかえり……。」
和室に座り、力の無い声で彼が言う。
「どうかした?身体の具合でも悪い?」
心配して近寄った。
「ふざけんな!また不採用だよ!自分が働いてるのがそんなに偉いのかよ!!」
突然、切れて立ち上がって近付いて来た。
(あ…これ、やばいかな?)
思った瞬間、彼の右ストレートが頬に当たった。
彼はいつも、1発、手を出すとそれがショックなのか停止する。
そのまま部屋にいたら続きが始まるかも知れないと思い、いつも私はそこで部屋を出ていた。
今日も部屋を出た。
携帯だけ握り締めて。
家から歩いて30分の大きめな公園に逃げ込む。
お気に入りのベンチに座って、
(しまった。今日は財布もタオルも持って来なかったや。)
と、自分のアホさを笑う。
財布があれば頬も冷たい缶ジュースで冷やせるし、タオルがあれば水道で水に濡らせる…痕が残ると仕事の邪魔だ。
明日も仕事…夜になれば彼も頭が冷えて冷静になり謝るか、寝てるかのどっちかだ。
会社での私はダメ男製造機と言われている。
それも仕方なしで、自分でも男を見る目がないのか、自分が作っているのか最近は分からない。
最初に付き合った高校生時代の彼は、優しかったが次第に束縛男になった。
最後はもうストーカーだ。
別れるのも苦労した。
次がミュージシャン、バンドを組んでライブハウスで歌っていた。
彼の夢を応援した。彼女として当然と思ったらいつの間にかヒモになってた。
次が、未婚だと思って付き合っていたら既婚者で、奥さんから慰謝料を請求された。
そこでやっと既婚者と気が付いた。
ダメ男に当たれば当たるほど、自分はそういう人に惹かれるんだろうな……仕方ないよな、と思い、仕事はいくら忙しくてもブラックでも辞められない。
そして今日も、お気に入りのこのベンチで時間を潰す。
「別れた方が良いよねー。」
ひとり呟く。
陽が沈み出した公園は人も少なくなって来ていた。
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