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「出来なくて…どうしたの?ここに逃げて来たの?」
「お姉さん、心配してくれてる。嬉しいなぁ。」
莉梨子は本当に嬉しそうに言う。
「心配するでしょう?親切にしてもらったんだし。ゆら、で良いよ?」
「ゆらさん。朝起きて1番で式場にキャンセルに行った。
相手の家に行ってそれを伝えて、ご両親にもお相手がいるなら私の出る幕はありませんよね?って伝えて、さよならを言ってスッキリして家に帰ったら、父親に怒られた。良い縁談だったのに、式の2日前に何してくれた!気に入らないなら2年位我慢して離婚すればいいだろうって。」
「酷い!それ、おかしいよ?お父さんでしょ?」
思わず横を向き、ムキになり言った。
「ゆらさんのその反応が、今、凄く嬉しい。
一人で生きて行けると思ったら大間違いだ!勝手な事をして、出て行け!
一人で生きていけるならやってみるがいい、反省するまで戻ってくるな。
と、言われてしまって…ここに。行くとこないし。」
「そっかぁ…泊めてあげたいけど、うちも危ないし。」
「ゆらさんの頬の原因?聞いてもいい?」
「うん、一緒に暮らしてる彼なの。」
「時々、ここに居たよね?その時も彼?」
莉梨子も由良がひとりでいた姿を覚えていた。
「うん、私ね?」
由良は会社でダメ男製造機と呼ばれている事、その所以を話した。
「ゆらさん、すごいね…。」
「本気で思われてるのが分かるから、なんかもう、傷つくわ。」
と言うと、莉梨子は笑った。
まだ幼さの残る、可愛らしい笑顔だった。
「ちょっと待って。泊めてくれる所探す。」
由良は唯一の携帯を操作した。
「悪いよ。ゆらさんこそ、泊めてもらった方が良くない?」
「時間が経てば、頭が冷えて反省してるか、寝てるの。平気よ?」
そんな会話をしていたら、後ろの茂みで音がした。
驚いて二人で振り向く。
「えっ?何?」
「ホームレス?」
「失礼ね?こんな美人の子連れのホームレスがいる?」
小さな子を、奥にあって見えなかったベビーカーに載せて、彼女は敷いていたシートと掛けていたであろう毛布を片付けた。
「そこで寝てたんですか?お子さんいるのに危ないですよ?」
由良は驚いて言った。
「あなた居たから。ベンチの後ろだし、そこに居たのが男なら移動してた。でもあなただったし、当分、動かないでしょ?いつも。」
「いつも?」
由良が聞く。
「大体、いつもあなたは暗くなるまで動かない。」
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