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「いつもって…あなた、いつもそこに?」
「いつもじゃないわよ?雨の日はいないし、ベンチに座っているのが男か、怪しそうならいない。帰るよ?」
「でも、今、いつもって…。」
子連れの美人はベンチの前に出て来て、
「だから!あなたがいる時は、夕方までここに居るの。あなたは暗くならないと動かないし、変な男でも来たらちゃんと悲鳴をあげる人でしょ?」
堂々と言い切った。
「褒められてるのか、分からないけど…ありがとう。」
「ええー。ゆらさん、そこお礼いうとこ?」
莉梨子は笑って言った。
「話し、聞こえたんだけど、りりこさん?」
美人は指を差して言う。
「はい…。」
勢いに押されて莉梨子は返事をした。
「あなたの勇気は素晴らしい。バイトでも何でも探して自立出来るまでうちに来なさい。部屋は空いてるから、間借りでもシェアハウス?でも良いから、部屋代はバイトでも決まったらもらうから。」
「えっ?お姉さんとこ?」
「私も心配だったから有難いですけど、あなた…信用出来ますか?
彼女、お金持ちの家の子みたいだし、誘拐とか洗脳とか……。」
「あなた、面白いね?テレビの見過ぎじゃない?
りりこちゃんはこの位の警戒心は持った方がいいね?」
と言うと、財布から名刺を2枚出し二人に渡した。
「江藤 留衣子さん。 大手の広告代理店勤務?しかも、課長って。」
由良が驚いて言うと、莉梨子は全く分からない顔をしていた。
「ゆらさん、そんなに有名な会社?うちより?」
「大きい会社だよ?私のとことは天と地ほど違う。りりこちゃんのうちって?」
「伊藤建設。父親の会社。」
「最大大手……お嬢さまかぁ、納得だぁ……。」
「うちとは取引ないし、畑違いだしね。問題ないでしょう。気になるなら、ゆらさん?
あなたもおいでよ。どうせ暫くはここに居るんでしょう?
まだ冷えるし、あったかいお茶くらい出すよ?」
名刺で信用した訳ではないが、莉梨子は行く気になっていたし、寒いのは寒いし、着いて行く事にした。
公園から歩いて10分弱、大きなマンションに到着した。
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